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神戸地方裁判所 昭和57年(わ)602号 判決 1982年12月08日

裁判所書記官

加治直和

本店所在地

神戸市中央区北野町二丁目一〇番一〇号

三英興業株式会社

(右代表者代表取締役林英瑞)

本籍

神戸市中央区北野町二丁目六六番地

住居

同町二丁目一〇番一〇号

会社役員

林英瑞

昭和五年一〇月一四日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官馬場康史出席のうえ審理して次のとおり判決する。

主文

被告法人三英興業株式会社を罰金八〇〇万円に、

被告人林英瑞を懲役一〇月に、

それぞれ処する。

被告人林英瑞に対し、この裁判の確定した日から二年間、右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告法人三英興業株式会社は、神戸市中央区北野町二丁目一〇番一〇号に本店を置き、真珠加工販売業を営むもの、被告人林英瑞は、同会社の代表取締役として業務全般を統轄しているものであるが、被告人林英瑞は、被告法人の業務に関し、法人税を免れようと企て、

第一  昭和五三年六月一日から同五四年五月三一日までの事業年度における被告法人の所得金額は二、九二四万七、七四三円で、これに対する法人税額は一、〇五七万四、六〇〇円であるにもかかわらず、仕入を水増し計上し、これによって得た資金を無記名の定期預金にするなどの行為によりその所得の一部を秘匿した上、同五四年七月二四日、同市中央区中山手通三丁目七番三一号所在の所轄神戸税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が一、五〇四万一、六五七円で、これに対する法人税額が四九一万三、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右事業年度の法人税五六六万〇、八〇〇円を免れ、

第二  同五四年六月一日から同五五年五月三一日までの事業年度における被告法人の所得金額は一億〇、四九五万六、四一三円で、これに対する法人税額は四、〇四〇万四、〇〇〇円であるにもかかわらず、仕入を水増し計上し、これによって得た資金で割引債券を購入するなどの行為によりその所得金額の一部を秘匿した上、同五五年七月三〇日、前記神戸税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が五、四四七万七、一二二円で、これに対する法人税額が二、〇二二万一、三〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右事業年度の法人税二、〇一八万二、七〇〇円を免れ、

第三  同五五年六月一日から同五六年五月三一日までの事業年度における被告法人の所得金額は六、九六七万五、九一一円で、これに対する法人税額は二、七一八万五、二〇〇円であるにもかかわらず、仕入を水増し計上し、これによって得た資金で割引債券を購入するなどの行為によりその所得金額の一部を秘匿した上、同五六年七月三一日、前記神戸税務署において、同税務署長に対し、所得金額が三、三九四万九、二一六円で、これに対する法人税額が一、二一九万七、七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により、右事業年度の法人税一、四九八万七、五〇〇円を免れ、

たものである。

(証拠の標目)

一  被告人林英瑞の当公判廷における供述

一  同被告人の検察官に対する各供述調書(察甲71、72号)

一  同被告人の大蔵事務官に対する各質問てん末書(検甲58ないし70号)

一  蘇金義、林英隆、林英昌の検察官に対する各供述調書(検甲43、47、55号)

一  吉見昭治、村上孝志、河野敬、蘇金義、林英隆、林英昌、林文子の大蔵事務官に対する各質問てん末書(検甲35、ないし42、44ないし、46、48ないし54、56、57号)

一  大蔵事務官作成の各脱税額計算書(検甲1ないし3号)、各証明書(検甲4ないし6、34号)、各査察官調査書(検甲8、9、15、16、18、28ないし32号)及び各現金預金有価証券等現在高確認書(検甲10ないし13、33号)

一  河野敬、村上孝志、佐藤雄三作成の各供述書(検甲14、26、27号)

一  小林洋祐、吉見昭治、村上孝志、楊永清作成の各確認書(検甲17、19ないし25号)

一  登記簿謄本(検甲7号)

なお、弁護人は、刑事手続におけるほ脱所得額の認定にあたっては、まず損益計算法による立証をして、これを財財産増減法による立証で補完、確認する方法が原則的にとられるべきであるにもかかわらず、本件では、特別の理由もないのに財産増減法による立証のみしかなされていない点に問題があると主張する。

しかしながら、損益計算法も財産増減法もそれによって算出された結果は理論上一致するものであるから、本件のように個々の財産項目につき実額による算定がなされている事案においては、財産増減法のみによる所得額の立証も当然許されるべきであり、弁護人の右主張は採用しない。

(法令の適用)

一  被告法人

判示第一、第二につき各昭和五六年法律五四号による改正前の法人税法一六四条一項、一五九条

第三につき法人税法一六四条一項、一五九条

併合罪加重 刑法四五条前段、四八条二項

一  被告人

判示第一、第二につき各昭和五六年法律五四号による改正前の法人税法一五九条(懲役刑選択)

第三につき法人税法一五九条(同)

併合罪加重 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(最も重い判失第三の罪の刑に加重)

執行猶予 同法二五条一項

(裁判官 清田賢)

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